2020年6月21日日曜日

当たり前。

爽やかな青空広がる土曜日の朝。
梅雨の貴重な晴れ間に天日干し作業もある工場。
塩ビというプラスチック原料を再生化しています。
濡れている粉を乾燥することがいの一番なので
暑い夏にも飛行機ジェットの小型版
(その名もジェットヒーター)
数台が稼働していて、炎天下の夏、
作業員は外へ”涼み”に出ます。(苦笑)
乾燥装置は鉄製。
第二次ベビーブーマーより上の皆様なら
教室のダルマストーブが大型になって
熱を発散し続けているとイメージすれば
わかりやすいかと。
それでも厨房や1000℃のるつぼ前で作業する
ガラス工房などと比べればまだまし、
などと従業員を激励してしまうと今どき
なんとかハラになるかもしれません。
家内工業ですとそういうことが宿命のような
当たり前のことになってしまいます。
言い換えればそこに甘えてしまう部分もあり、
ちょうどこの時期に今までの当たり前を

”果たして本当にそうなのか?”

と様々検討し直しております。
ここへ至るプロセスを知る自分としては
現在の姿が”これしかない”にたどり着いてるよりは
”これならどうか”のほうがまだまだ多い。
もちろん”その時”は様々検討した上での形ですが
その後に視野が広がれば見えることも変わるので
むしろ変わらない形はきちんと向き合えてない、
と言えるような気がしてきました。

例えば素材。
装置は鉄で作る。当たり前なのですが、
実は”塩”を含むだけあって原料との相性も悪い。
錆びて壊れてしまった扉を修理することも、
今までは鉄で補修、しか考えていませんでした。

”重くて錆びる鉄”と対極の
”軽くて錆びない”ものは?

やはりプラスチックとイメージはしていたものの、
高熱には弱いかな、と踏み込みが甘いままでした。
あらためて一応グーグルさんで

”耐熱プラスチック”と検索すると

”ポリカーボネート”と出てきました。

こちらはついこの間、店のリニューアル作業のため
ホームセンターで見つけた素材でした!!
店では全く違う目的で探し出会った素材でしたので
耐熱性までは恥ずかしながら勉強不足。

ちょっとしたことですが、これが使えるとなると
今後の機械設計も根本的に変わってしまうほど、我々には大発見。
現在テスト中ですが、問題なさそうです。
メーカーにとってはまさかの用途でしょうし、
我々も漠然とした課題のままでしたら
おそらく発見出来なかったことでしょう。
熱さも具体的にどれくらいの温度が必要なのか?
そもそも温度だけの問題なのか?
処理後の乾燥具合の塩梅から逆算することで
ジェットヒーターの小型化に成功。
工場内温度が50℃から46℃へ下がりました。
大差ないようでもがけば変わるという事実が
まずは大切。

鉄だから当たり前
夏だから当たり前

その当たり前を疑ってみることの大切さを
あらためて学びました。

この学びは、僕が工場の仕事だけをしていたら
おそらく気付けなかったことです。
店主として出会う作家達がより良い作品、
よりオリジナリティを表現しようとする姿勢に
刺激を受け、紹介する立場としても負けじと
もがき続ける日々があってこそと、
ようやく少し見えてくるものもあります。

真珠に対するアプローチや作品へのこだわりも
各作家のスタンスはそれぞれ違います。
でも、真珠に対する純粋な愛情は皆さん同じ。 
ちいさな店でこれだけ素晴らしい仕事を紹介出来る
ことはなかなかないことだと思っております。

ジュエリーのハンドメイド。
優雅な作品と裏腹に手元の作業はなかなか厳しい。
金やプラチナを溶かす温度は1000℃以上。
思い描くデザインを表すためには自分で工具を
作らねばならなかったりもします。
それでも同じで満足せずに少しずつでも変えてゆく
勇気と根気が、いつでも大きな気付きへの第一歩。
1つ作品が出来るとそこから学び次はこうしよう。
当店で紹介する作家全員共通の姿勢です。
17世紀に想いを馳せる


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