2024年9月19日木曜日

CONTEX

今週末、秋になる天気予報が当たるのか?

期待してしまいますね。

洋服秋冬コレクションの段ボールが毎日届き、

そろそろ暑さも終わらないと洋服屋としては

正直なところ困ってしまいます。

秋はおしゃれが楽しい季節。

少しでも長くお楽しみいただきたいものです。


日曜日の昼下がり。

小さな店では最近非常に珍しい飛び込み営業で、

男性が段ボール1箱抱えて入ってきました。

箱のロゴを見てびっくり。

十数年前、先代が扱っていたCONTEXという

今治タオルのメーカーさんでした。

創業99周年の老舗タオルメーカー。

平成生まれ営業マンはバリバリ昭和スタイル。

ですが、流儀はタオル業界の常識に捕われず、

下請け仕事もせず、百貨店や問屋に卸さず、

自社開発した商品を段ボールに入れて

今回のように小さい店にも直に足を運び、

1件1件開拓しているのだとか。





そんな今治製のタオルのCONTEXを代表する

MOKUというシリーズは、現在とてもアツい

サウナ業界では知らない人もいないほど、

圧倒的な存在だそうですし、

海外へも38カ国へ輸出しているそうです。

織り方の失敗から生まれたLANAシリーズも、

確かにそんなに薄くていいの?と思いましたが、

それこそが吸水性、速乾性の答えともいえ、

僕もバスタオルを試しておりますが、

サッと拭き上がり気持ちのいいこと。

それこそ、高級タオルは分厚いという

今までの常識がひっくり返りました。

業務もFAX1枚で取引スタート。

すぐにWEB上で発注出来るシステムが提供され

少量の発注も可能。商品もすぐ届きました。

中間マージンを想定していないため、

価格もリーズナブルでお客様がびっくりして、

大人買いする人も多発し、おかげさまで

あっという間に初回仕入れ分はほぼ完売という、

当店では非常に珍しい現象が起きました。(笑)

すべて、どこを向いて仕事をされているかが

明瞭で一貫している。

その先で作られる商品も洗練されていて、

仕事のあるべきかたちまで教わりました。

余談ながら、営業マンが母の故郷である丸亀の

学校に通っていたというご縁もあり。

いやぁ、本当にお見事です。

次回の入荷もお楽しみに!!



2024年9月7日土曜日

店主。

 『世界に1足、あなただけのスニーカー』

ワネスト移転当時にご案内していた

思い出の生地をスリッポンにするという企画。

お客様にも好評でしたし、

ここにしかないサービスとして、

母から継いだ店を花開かせる可能性を抱き、

自分に前を向かせるものとなっておりました。

ある日、出来上がったシューズをお渡しすると、

『お願いしたことが反映されてなく

履けないから、なんとかしてほしい』

と、お客様からシューズが返ってきました。

こちらのオーダーについては僕が別の接客中に

制作者と直接お話しされていたので大丈夫と

安心して任せてしまっており、

詳細を確認せずにおりました。

慌てて制作者に確認したところ、

ご希望のとおりにしました、という回答。

僕にはどんな会話がなされていたかを振り返る

事実関係がなにも残っていないので、

なにが違っていたのかがさっぱりわからず、

言った言わないの話しをしている場合でもなく、

(もちろんお客様に言えるはずもなく)

とにかく対応が出来ないか?

検討したがやはり難しい。

次に都内の靴修理工房を探しては1件1件訪ね、

相談するも回答はことごとく不可。

そうこうしているうちに日数も経過し、

『方法が見つかりません』

なんて怖くて連絡できないという状況が続き、

自分の中でもその問題がずっと引っかかっていて

気持ちの重い状態が続いておりました。

そんな折、しびれを切らしたお客様から、

『連絡もよこさずどうなってるの?』

という、厳しい口調の連絡があり、僕も観念。

一度ご自宅へ伺い状況を説明したいとお願いし、

なんとかお許しを頂きました。

とにかく謝ることしか方法がなく、

逃げ出したい気持ちで手を震わせながら運転し、

それでも目的地へ到着してしまった時の緊張・・・

それと比べれば税務調査官との厳しいやり取りも

まだ、と思えてしまうほど。

(そちらもかなりしんどいのですが・・・)


『若いあなたの将来を考え、厳しくしたのよ』


後にそんな優しい言葉を頂き、泣き崩れましたが(笑)

まさにその時『店主』という立場とその意味を

学ばせていただいたと思います。


とても厳しく僕の一連の対応を指摘され、

僕は謝るしかないという状況が続く中、

ふとした会話の中からご実家が”佐賀”と伺い、

当時取引のあった”佐賀の靴工房”を思い出し、

そこに掛けてみようと思った僕は、

可能性は限りなくゼロなのでお客様に

詳しいことは告げず、

お返ししようと思っていた靴を預かり、


『もう一度だけチャンスを下さい』


と言いました。

一連の不手際がありながら、

もう一度預けていただいたこと、

叱っていただけたこと、

しみじみありがたいと思っております。

一方工房からすれば直接のお付き合いでもなく、

取引高も細々とした名もなきちいさな店から

突然届いた、

取引きとは全く関係のない無理難題の手紙。

一応取引先であることが相手からすれば

より厄介に感じたはずです。

一方、こちらはこじつけたような奇跡にすがり、

とにかく必死でした。

たぶん無理でしょうけど話しだけならと、

やんわりお断りなメッセージを頂きましたが、

すぐに佐賀まで日帰り直談判弾丸ツアーを敢行。

まさか佐賀まで来るまいと思っていたでしょう。

さすがに無下に断れなかったのと、

やはり同じ靴好きとして企画には理解を

してくれたのではないでしょうか。

担当者のものづくり魂にも引火し困難への挑戦に

お力添えを頂けることとなりました。


数か月後、見事履きやすい靴へと生まれ変わり、

早速お客様へ届けると、とても喜ばれました。

靴の出来栄えももちろんですが、

やはり佐賀の靴工房が尽力したということも

とても意義深かったようで、以来、帰郷の際には

工房へ寄ってくださっていたそうです。


その靴を8年ご愛用いただきソールが摩耗、

その交換が出来ないか、という今回のご相談。

生地の部分は切れてしまっているのですが、

それでも履きたいというお客様の気持ちに、

再び当時の担当者が応えてくれました。

漫画ワンピースご存じの方でしたら、

空島でメリー号をクラバウターマンが修理する、

そのシーンが重なりました。(笑)

どうかもう少し、と祈るばかりです。



店主としての覚悟を教わった大切な靴。

あれから、色々なことが変化している中で

そのご縁が繋がっていることも嬉しく思います。





2024年9月4日水曜日

点。

 魔女の一撃で這いつくばっていたら、

懇意の施術家より、

『急性腰痛は病気でもなんでもないので

安静にしていてはダメです!!』

と、叱られました。

経験の無い痛みに、つい慎重になりましたが…

最近のTVの天気予報と同じですね。

良い施術家と出会い、それに頼り過ぎて

かえって思考が停止してしまう本末転倒。

(笑)

かなり痛いけど良いクスリとなりました。

(クシャミは恐怖です)

先週駆け込んだジュエリーの展示会。

この業界、価格は駆け引きで、ウソ、ハッタリは

当たり前という、僕の苦手なタイプ。

以前はハッタリのために高いスーツを着て、

それなりのジュエリーを身に着けて…でしたが、

相手は百戦錬磨。筒抜けな自分が痛々しく思え、

最近はいつも通りで会場へ乗り込みます。

相手からすれば明らかに

“買う気配の無いバイヤー“

と見られております。

実際沢山仕入れるわけではないからと、

甘んじていたところ、最近通う老舗の宝石商で

飾らない博学の紳士からお話しを伺いながら

稀少なダイヤを見せてもらい、さあ商談、

となったところで自分の所作があまりに酷く、

駆け引きもなにもあったものではないな、

出直しを決めました。

いつまでも恥ずかしい思いをしてる場合か?

いい歳した自分に腹もたちますが、

いい歳しても恥ずかしく思える状況も、

歩んでいる証拠かな?と言い訳したり。

とりあえず携帯のメモに課題を追加しました。


会場で久しぶりにお会いした作家さん。

作風が似ているなぁ、と思って名刺交換すると

なんとご本人でした。(笑)

あちらも名刺を見てお互いに『アー!!』

前に一度だけ、わずか2点のお付き合いなのに、

きっとこういう時、珍しい苗字と素人な感じは

かえって忘れないのかも??

その時と比べれば僕自身もあれこれ考えていて、

作家さんもあれこれ試している。

その交わる“点“の話しを、なんか面白そうと

気軽に考えてくれるキャリア40年の大先輩。

最後に、

『あっ、そういえば条件は?』僕

『安味さんだからこちらで』作家

『いやー、ありがたいけどそれは…』僕

『正直これなら嬉しい』作家

『もちろんです』僕


波長でパッと決まってしまいました。

こういう関係で出来る仕事、僕は好きです。


簡単なことではないけれど、

ここからなにかを生み出せればいいな、

と思っています。